Saturday, February 4, 2012

野村島弘美NY個展、ソニア・ゲチトフギャラリー Vol.2


































まず最初にギャラリーをどのような空間にしたいか考えた。




訪れた人が一歩足を踏み入れた際に、教会や寺院に入った時の様な神聖な気持ちになってもらえる様にと、平面作品の位置、立体作品用のペテストロフ(作品を置く台)の形そして位置を慎重に決めた。




大小合わせて13点の作品は、それぞれのあるべき位置に収まらなくてはならない。
お互いを引き立てあい、邪魔にならない位置を慎重に探す。




今回の展示でメインとなったのは4点の平面作品。個展のタイトルと同じく"Pure Land"と名付けられた作品たちはどれも木にコンテで直接描き、金箔を施したものである。当初は部分的に油絵の具で着色を施そうと考えていたが、よりラインの強さを引き出すために下書きが終わった時点で変更したのである。















































"Pure Land - ni"
高さ55インチ(139.7cm)、幅36インチ (91.44cm)




この作品では、頭部を布で隠した女性が雄鹿に股がっている。女性は一糸まとわぬ姿で優しく雄鹿に掴まる。雄鹿は女性とは対照的に、そのびっしり生えた毛と逞しい角を持ち、圧倒的な存在感で目の前のものを魅了する。でもその目には威嚇的なものはなく、極めて静かな瞳でこちら側を見据える。




私はこの作品を通して2つの生物の間に生まれる親密な関係性、そして肉体の美しさを表現したかった。過去7年間に渡って、人物デッサンを続けてきた際に目の当たりにした人体の神秘的な美しさを共有したかったのである。




他の作品にも共通するが、女性の頭部を布で覆ったのは、そうする事で女性の人種やあらゆる背景を指定しないためである。誰もがこの女性になりえるのである。














































"Pure Land - shi"
高さ55インチ(139.7cm)、幅36インチ (91.44cm)




救世主の様に現れた中心の人物は、何かを示す様に左人差し指で天を指している。足下には
二匹の狼を従え、その一匹は鋭いまなざしでこちら側の様子を伺う。太い小指に巻かれた数珠は、人物が何かの信仰を持っている様に示される。




私は渡米するまで、数珠というのは主に仏教徒のみが使用するものだと思っていた。ところが、のちに世界三大宗教全てで使われていること、ロザリオ(キリスト教徒が使用する数珠)が仏教徒の数珠に類似していることに驚いた。似ているのは見た目だけではなく、お念仏を一回唱える度に一回弾くところも良く似ている。




天から舞い降りて来た者に相応しく、人物の周りには金箔が貼られている。これも私が大切にしたディテールで、絵の具ではなく本物の金をあえて使用した。




この作品では生命の強さと、マスキュリンさ、そしてガーディアン(守護者)の存在の可能性を描いている。人はお互い守り、守られて存続できるのではないだろうか。
















































"Pure Land - ichi"
高さ55インチ(139.7cm)、幅36インチ (91.44cm)




この作品は私が長年続けてきているヨガのポーズにインスパイヤされ、製作した作品である。一組の腕はシークレット・プレイヤー(背中中央で手を合わせる)ポーズをして静かな祈りを表現、もう一組の腕は胸を大きく広げて何事をも受け入れる心構えができている事を表現している。




人物の周りで慌ただしく中を舞う6羽のニワトリたちは、恰も人物の祈りに影響されて興奮しているようだ。



私は昔からニワトリという動物に惹き付けられた。その色や形、羽の感触は美しく、そして良く観察すると1羽1羽まったく異なった顔つきと表情があるのも面白い。



この作品では時に私たちの意思とは別に反応する煩悩を表現したかった。















































"Pure Land - san"
高さ55インチ(139.7cm)、幅36インチ (91.44cm)





3羽の白鳥に股がり金の波に乗って現れた人物。勇ましく登場した彼の頭部もたっぷりの布で覆われている。白鳥はその特徴的な長い首を盛んに動かし、進むべき道を模索している。




この作品では特に、土台となる木の木目がドローイングをどう引き立ててくれるかを考えた。木も、私が幼い頃から惹き付けられてきたものの一つである。このシリーズを制作するにあたって、まず”木に描きたい”という発想から全てが始まった様に思う。




世界中に水にまつわる神は存在する。この作品は彼らの力強い存在感、神秘性に影響されて描いたものである。




(Vol.3につづく)

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