"MAURIZIO CATTELAN"
典型的なイタリア人のファーストネームと、一見スペイン(カタランの)カタルーニャ人では、と思わせるラストネーム。
今回栄えある、ニューヨークの代表美術館の一つ、グッゲンハイム美術館で大規模な個展を行っているイタリア人アーティスト、モリッチオ・カタラン。
カタランの代表的な作品と言えば、1999年に発表されたバチカン市のローマ法王を宙づりにした"La Nona Ora"。この様に時代時代に起こった出来事、象徴的な人物を皮肉たっぷりにモチーフにしているのが彼の作品の特徴である。
何度となく訪れてきたグッゲンハイム美術館が、いつもとは打って変わって様変わりをしている。
見上げると大きな茶色の馬が圧倒的な存在感で宙に浮いているのだ。
そのぐったりともたれた頭は、下から見上げる私にとてつもない重量感を与える。
馬の周りを見渡す。
ピノキオ。
大きな頭のピカソらしい男。
それぞれの作品に関係性がありそうでもあり、そんなものは全く無いのかもしれないと思ったり。そこで気がつく。
これらの作品は”時代背景の繋がり”で間接的に、でも実は密接に繋がっているのではないか、と。
そんなこんなとを考えている矢先、美術館関係者に”エレベーターを使って最上階に登って、そこからスタートした方が良い”と勧められる。
確かに、綺麗な螺旋階段状に建築されたグッゲンハイム美術館の中心にインストールされている様々な作品を眺めるにはそうするべきなのだろう。作品の多くは正面、もしくは上の方から観た方が良いものが多い。
最上階に到着。
今回のインスタレーションの仕掛けを拝見。なるほど、こうやって吊るされているのか。
反対側には憎い演出、てっぺんに鳩たちが佇む。(もちろんはく製)
覗くと、はるか下の方に地面が見える。
棺桶に入ったJ.F.ケネディーに、
小さなヒットラー。
やつれたヒットラーは、自分が犯した過ちを償うかの様な表情とジェスチャーをしている。
でもこんな風に作品を観客と一緒に観ると、ヒットラーでさえも過去の歴史上の人物の一人に過ぎない。
モチーフ選び、そこには秩序があるのかないのか。
個人的には、グッゲンハイムの形態にとてもマッチしたインスタレーションに感じた。
平面作品を螺旋状に見せるよりも、ここではこんなインスタレーションの方がしっくりくるのではないだろうか。
この中指は誰に向けられているのだろう。
動物のはく製。
ローマ法王。
巨大な恐竜の骨。
ケネディー。
ブレーメンの音楽隊。
ヒットラー。
”Z”のゾロマーク。
頭の大きなピカソ。
サッカーゲームなどなど。
私の頭には、少年と大人の男が共存したカタランのイメージが浮かび上がるのである。
グッゲンハイム美術館でのモリッチオ・カタラン展は2012年の1月22日まで開催。
http://www.guggenheim.org/new-york/exhibitions