Saturday, October 1, 2011

チェルシー 2011年 秋

ニューヨーク、チェルシーのギャラリーシーンは、アメリカだけではなく世界中のアートファンたちが注目している、言わずとしれたメッカである。


そのチェルシーのギャラリーが力を入れて作品を発表するのが9月から11月にかけてではないだろうか。


9月前では主に富裕層のコレクターはバケーションに出かけていてニューヨークにはいない。12月に入るとニューヨークの冬の寒さが本格的になり、人々の足がチェルシーから遠のく。


ということで、この時期のチェルシーには良い作品が沢山あるように思う。


今回は4つのギャラリー、4人のアーティストの作品をじっくり見学した。皆、ペインターだが、4人ともまったく違う作風の男性たちである。



まず訪れたのが、24ストリートにある ”Lyons Wier Gallery”。
http://lyonswiergallery.com/tim_okamura.html


以前も紹介した日系人アーティストのTim Okamuraが個展を開いていた。













































ストリートを西に下っていると目に入ってきた作品。


Powerful!!!


Tim Okamura, "Bronx, Brooklyn, Queens"というタイトル、所々に見え隠れするグラフィティーからもわかる様に、ニューヨークのローカルシーンをリアルに描こうとしている様子がうかがえる。










人物画の素晴らしさはもちろん、色選びのセンス、そして全体の構成の良さ。


縦横2メートル以上ある作品。残念ながら写真ではお見せできないが、アクリル用モデリングペースとを使用している様で、実物の作品にはしっかりしたテクスチャーが拝見できる。



彼の作品を観ていると、表現の自由の素晴らしさに改めて気付かされるのである。





次に向かったのが、25ストリートにあるGallery Henoch。
http://galleryhenoch.com/exhibitions_current.html


韓国出身、アメリカ育ちの画家、Kim Coganの個展が開催されている。






























































彼の初めての個展を同じくGallery Henochで観たのが確か3年ほど前。
オープニングで話した彼は30代前半であろうか、気さくなアジア人の青年であった。



たくさんの風景(主に町並み)を写真に撮り、コラージュしつなげたものを元に作品を仕上げるそうだ。


私がKim Coganの作品に引かれるのは、ブラシストロークを残した未完成な新鮮さと、独特な色使いから。彼の描く霧に紛れた高層ビルやネオンライトが私の胸に感傷的な気持ちを思い起こさせる。




3番目に訪れたのが、Gagosian Galleryと共に世界のギャラリー界のトップを走る、Marlborough Galleryのチェルシー館。
http://www.marlboroughgallery.com/



ここでは心待ちにしていたVincent Desiderioの個展が開催されている。


Vincent Desideri、人物油彩画を志す者の中では巨匠的な存在、ニューヨーク在住のアメリカ人画家である。マンハッタンのトライベッカにある具象画専門の大学院、New York Academy of Figurative Art で教授も務める。














































































作品のイメージを観て頂ければわかるであろうその狂気的な世界観と、確実な写実力が彼の作品の魅力ではないだろうか。今回の個展にはのべ20点あまりが展示されていたが、例えば写真上の作品は横幅2メートル以上はあるようにどの作品もけして小さくはない。


モチーフや作品の大きさが変わってもぶれない、彼独自の作品の温度や色使いが特徴的だった。



最後に訪れたのが、ギャラリー街の北に位置するJoshua Liner Gallery。
http://joshualinergallery.com/index.php


日本人アーティスト、Tomokazu Matsuyamaの個展が開催されている。















































































タイトルの"East meets West"からもわかる様に、母国日本のカルチャーとアメリカのそれを融合させている。古典的な日本画の構成の中にグラフィティーなどで用いられる技法や色使い、またスプレーペインとなどを取り入れている新鮮な発想である。



キャンバス(土台)の形もさまざまで、こだわりがある様にみられる。平面だけではなく、立体も手がけるアーティストならなおさらのことだろう。



今後の作品も注目される日本人若手アーティストである。



ニューヨーク、チェルーシー。


不況の波が押し寄せて以来少し元気がなくなった様に感じていたが、どうやら一山超えたようだ。